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うまい日本酒偉人伝・新酒鑑評会、東北が14年間一人勝ち・情報共有 技を高め合う
山形県工業技術センター元所長・小関敏彦さん(61・S49卒)
(2017年10月25日朝日新聞より)


全国新酒鑑評会の県別金賞受賞数順位(酒造年度は7月〜翌年6月)
(酒造年度) 2012 2013 2014 2015 2016
1位 福島 福島・山形 福島 福島 福島
2位 兵庫 --- 山形・新潟 山形・兵庫 宮城
3位 秋田・新潟 宮城 --- --- 秋田
4位 --- 新潟 秋田 新潟 山形
5位 山形 兵庫 長野・兵庫 宮城 新潟

 日本酒は、この20年間で劇的においしくなりました。精米技術が進み、クール便で冷蔵のまま流通できるようになったからです。進化した酒を「最高のうまさ」まで引き上げたのが、東北の蔵元たちです。その土台を築いたレジェンド(偉人)たちのお話を。

 研究員が指示
 11日、全国の蔵元が結果を見守る鑑評会が仙台市であった。仙台国税局が秋に催す東北清酒鑑評会だ。全国から注目されるのは、東北ナンバーワンの酒が、言わば全国1位を意味するからだ。

 春の全国新酒鑑評会はこの14年間、東北の一人勝ちで、今年も最高位の「金賞」を受けた242点中、東北6県で85点を占めた。ただ、金賞の中での順位はつかない。

 今年の全国新酒鑑評会で偉業を成し遂げたのが宮城県だ。23点出品し、9割近い20点が金賞に選ばれた。「こんな高い受賞率はもう出ない」と他県の関係者を驚かせた。立役者となったのが県産業技術総合センターの総括研究員、橋本建哉さん(53)。昨冬、杜氏を集めた作戦会議でこう支持した。「今年の酒米はむちゃくちゃ硬い。蒸してから1時間が勝負です」。それが勝因だ。

 宮城県単独の今年の鑑評会で、純米吟醸と純米の両部門で1位となった銘酒「日高見」を造る平孝酒造(石巻市)の平井孝浩社長(55)は言う。「いまは造る酒すべてが出品酒のレベルを求められる。それには研究機関による分析が欠かせない。橋本さんは蔵から麹を持ちかえると、翌朝の仕込みに間に合うように、その日のうちに分析結果を返してくれる。酒への情熱があるからできること」

 かたや金賞の「受賞数」で全国5連覇を達成しているのが福島県だ。県ハイテクプラザ会津若松技術支援センター醸造食品科長、鈴木賢二さん(56)は蔵に貼れるようにと、A4判の「製造マニュアル」を毎年配る。金賞取りの指南書だ。携帯電話にはひっきりなしに蔵からの相談が寄せられ、深夜でも応じる。

 全国有数の杜氏集団「南部杜氏」を抱える岩手県の工業技術センターは、3人の職員が各蔵をくまなく回る。醸造技術部長の米倉裕一さん(52)は「職人の技を生かすのが私たちの仕事」。次の時代をみすえ、海外向けの酒の酵母開発に力を入れるのが秋田県総合食品研究センターだ。青森県産業技術センターは寒さに強い酒米を開発し、実用化に乗り出す。

 30年前勉強会
 仙台国税局の主任鑑定官、安久津武広さん(42)は「どの県も情報を隠さずオープンにしている。十四代(山形)や新政(秋田)といった時代を牽引する酒が東北から生まれる土壌になっている」。

 東北の酒造りの躍進には、橋本さんや鈴木さんが「先生」と呼ぶ、山形県工業技術センター元所長の小関敏彦さん(61・S49卒)の存在が大きい。橋本さんは、灘(兵庫)や伏見(京都)の酒が主流だった20代のころから、小関さんに口酸っぱく言われたという。「オール東北で高め合わないと輝くことはできない」

 小関さんは30年前、ライバル関係にあった山形県内の杜氏を集めて勉強会を作った。「酒を造るのは人。人を育てたかった」と小関さん。いい酒を造るために、杜氏同士や各県の研究者が情報交換するのが東北では当たり前になった。躍進の陰には、この積み重ねがある。

 さて、東北ナンバーワンの酒はどこになったのか。結果は来月9日に発表される。

(岡本進)

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