長井のイクメン住職・小野卓也さんに聞く 仏の教えに育児の極意
(2013年11月26日山形新聞より)
仏の教えを実践し、3人の子育てに奮闘するイクメン住職がいる。長井市草岡の洞松寺住職、小野卓也さん(40・H4卒)は多忙な仕事をこなしながら、妻が単身赴任で不在となる平日は弁当作り、掃除、洗濯、子どもたちの遊び相手とフル稼働中。もちろん育児ストレスがたまる時もあるというが、それを解消する極意を仏の教えの中に見いだし、子どもたちと向き合っている。仏教と育児の関わりについて小野さんから話を聞いた。
仏教の教えに基づく子育てを実践する洞松寺住職小野卓也さん(H4卒)=長井市・同寺
小野卓也(おの・たくや) 1988年、24歳で洞松寺第33第住職に就いた。2001〜09年まで妻、子どもたちと茨城県に住みながら、同寺に通う「通職」を行っていた。10年から同寺に居住し、「主夫」を務める。仏教の教えに基づき、心の健康、ストレス解消などをテーマにした講演会を県内各地で開催。米沢女子短大非常勤講師。人権擁護委員のほか世界中のボードゲームを研究し、雑誌やホームページなどを通じて魅力を紹介する「ボードゲーム・ジャーナリスト」として活動するなど多彩な顔を持つ
完璧目指さず、縁生かし、慈悲の心で
小野さんの妻恭子さん(40)は研究職。月曜から金曜日まで茨城県に単身赴任し、週末に家に戻る。恭子さんが家にいない間、小野さんが長女晶子さん(11)長男陽平君(7)次女日向子ちゃん(4)の3人の面倒を見ている。子どもたちが部屋を散らかしたり、夜泣きをしたりすると、さすがの小野さんもストレスを感じることが多いという。
そんなときの小野さんの対処法は「いいかげんは『いい加減』。完璧を目指さないこと」。全ての実体には永遠不変の実体がないという仏教用語「諸法無我(しょほうむが)」の教えに基づき、「全てが思い通りにいくことはない。それは育児も同じ」と説明。「完璧を目指すとストレスにつながる。わずか1%でもできれば十分、と考えるだけで気が楽になる。くよくよと不満を引きずらず、気持ちを切り替えることが大切」と語る。
次の対処法は「一人で問題や不満を抱え込まず、頼れる人を頼ること」。「縁を基に出来事が起きる」「因縁で万物が生じる」という仏教用語「縁起」が基となった。育児に追われる人の多くが、周囲に迷惑を掛けることを恐れがちになる。家族や知人に「少しの間だけ子供の面倒を見てほしい」と頼みたくても尻込みしてしまう。
これに対し、小野さんは「迷惑をかけ合って生きるのが人間。『縁』をうまく育児に生かそう」とアドバイス。「頼めることがあれば積極的にずうずうしくなり、人に頼んでみる。断られても気にしない。その代わりに、相手が困った時にはこちらが助けになる」と人と人が関わって生きる大切さを説く。
さらに、子どもと向き合う上で大切なのが「慈悲」の心だという。仏教用語で「慈」は幸せを与えること、「悲」は苦しみを取り除くことを意味する。親が慈悲の心を実現する前提として、子どもが一体何を幸せや苦しみと感じるのかが分からなければならない。そのためには「子供に寄り添い、苦楽を分かち合うことが大切」だとし、「子どもの心が分かるようになれば、その応用で他人に対しても想像力が働くようになる。人の心を察すること、すなわち「菩薩(ぼさつ)の心」に通じる」と話す。
小野さんは仏教の教えに基づく厳しい修行と日々の育児には共通点があると語る。ただ、それは「つらいことにひたすら耐えること」を意味するわけではない。最初はつらく感じる修行でも、それを続けるうちに心身が慣れ、いつまででもできるという感覚になるという。「当たり前のことを、当たり前にできるようにするのが修行で、それは育児も同じ。子育てを続け、育児になれる中で楽しいと思える瞬間が来る」
社会にイクメンという言葉は定着したが、小野さんはこうした現状に納得がいかないという。「男性が育児に関わるのは当たり前のことであり、『イクメン』がクローズアップされる時代に不満を感じる」。男性の育児休業取得率が女性に比べてまだまだ低い現状については「育児に積極的に関われる育休は、人間として成長するチャンス。育児という『修行』を終えて会社に戻った父親は、一回り成長した姿で仕事に臨むことができる」とメリットを強調し、企業側の意識改革を求めた。
小野さんの子育てスケジュール |
|
午前5:30 |
起床 |
6:00 |
朝食と次女の弁当作り |
6:25 |
子どもたちとテレビ体操 |
6:45 |
朝のお勤め。仏様にご飯を供え、お経を上げる |
7:00 |
朝食 |
7:30 |
小学校に登校する長女と長男の見送り、洗濯など |
9:00 |
バスで児童センターに向かう次女の見送り |
午後4:30まで |
法事、葬式、寺関係の会合、人権相談など。合間に掃除 |
4:30 |
帰宅した子どもたちと触れ合う。残っている仕事をこなす時も。 |
7:00 |
夕食 |
8:00 |
子どもの歯の仕上げ磨き |
9:30 |
子どもたちと一緒に就寝 |
ボードゲームジャーナリストとしても活動する小野さんが集めたボードゲームで遊ぶ子どもたち
イグメン共和国が来月8日イベント(山形) 先着100人、参加者募る
子育て中の父親たちで組織する「やまがたイグメン共和国」は12月8日、小学生と父親を対象とした育児イベント「絵本ですよ!パパも子どもも全員集合」を山形市のヒルズサンピア山形で開く。先着100人で参加者を募集している。
NPO法人ファザーリング・ジャパン(東京都)の安藤哲也氏を講師に迎え▽子どもが笑顔になる絵本の読み聞かせの極意▽子どもの心をつかむ絵本の選び方―などを学ぶ。参加無料。好きな絵本を一冊持参する。父子を応援したいママも「イグメン応援団」として参加できる。問い合わせはやまがた結婚サポートセンター内の山形法人会023(687)1972。