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自然を愛する子どもに・高山義則さん(S33卒) 実物に触れる機会提供 「保護」の気持ち育む
(2012年3月16日山形新聞)

高山義則さん
しらたかサイエンスクラブ団長 高山義則さん(S33卒)

 山形大教育学部を卒業して神奈川県で理科教員になり、5年ほど前に故郷の白鷹町に戻りました。およそ50年ぶりに戻って最初に気付いたことは、子どもたちの姿が野にも山にも川にもほとんど見られないということでした。
 子どもが少なくなったということもあるのかも知れませんが、それだけが原因でないように思えました。スポーツや習い事のためにスケジュールがきちんとできていて、自由な時間がほとんどないのではないかと思えました。
 町民憲章の文言にもあるように、この辺りには「豊かな自然」があると表現されています。でも、いまは決して適切な表現ではないと思います。近くの小高い山に行っても、アカマツやコナラの木が枯れています。そして小鳥やキノコや、地面をはいずり回っている虫たちの姿はほとんど見られません。どうしてこのようになってしまったのでしょう。
 長い間住んでいた神奈川県藤沢市と隣の横浜市の間を流れている「境川」という中小河川があります。この川には今ではアユも上ってきます。しかし30年ほど前はひどい状態でした。水門から落ちる水から巨大なシャボン玉ができ、風に流され飛んでいました。ヘドロ状の泥が底に沈んで水はドブ臭く濁っていました。この状態は川と人々を話した結果だと言われていました。
 安全を確保するという名目で川岸には立派なフェンスが造られ、水辺に近づくことができなくなりました。「川は危険な所」という宣伝がなされました。その結果、流域住民の心の中に川を大切にする気持ちが薄れました。川にごみは捨てるし生活排水を平気で流し、畜産排水も垂れ流すようになりました。
 今、最上川のほとりに立って思うことは、流域に住む子どもたちがこの川をどう認識しているのだろうかということです。あの境川で見たことと同じになってはいないかということです。つまり「川は危ない所」「川の水は汚いもの」「川に住む魚は食べてはならないもの」と思いこんではいないでしょうか。
 言葉よりも、まずは実行することが大事と思い、2年前に「しらたかサイエンスクラブ」を立ち上げました。小中学生たちが、最上川やその付近の山や野原で自然の生き物などに直接触れる機会をたくさん提供しようと、同好者で運営しています。今のところささやかな活動ですが、毎月1回集まってくる子どもたちは生き生きと活動しています。
 そして子どもたちが自然と直接向き合う機会を多く作り、「なぜ?」「どうして?」と思うチャンスをできるだけ多く持ってほしいとの思いで活動を展開しています。
 ふるさとの自然に愛着を持たせることが、この自然を守り育てようとする気持ちにつながるのではないでしょうか。そして「実物に触れなければその良さがわからない」をモットーにして、子どもたちと一緒に楽しみながら活動を続けようと思っています。
(白鷹町在住)

子どもの好奇心を刺激・高山義則さん(2011年1月19日山形新聞)
理科学びにおいで 元教員の高山さん、小中生対象の「クラブ」(2010年8月25日山形新聞)

 

3月16日山形新聞