藩校興譲館、米沢中学、米沢一高、米沢西高、米沢興譲館高と続く米沢興譲館同窓会公式サイト

ホームページロゴ

地域挙げて“おもてなし” 人材育て観光資源生かす
朝日町観光振興推進員・亀井秀介さん(S62卒)(2010年9月22日山形新聞掲載記事)

亀井秀介さん
朝日町観光振興推進員・亀井秀介さん(S62卒)

 先日、朝日町宮宿に「蔵のひろば」がオープンした。カフェと広場、そして総合観光案内所の「あさひ旅のココロ館」からなる観光交流拠点である。触れ合いの中で、朝日町のおもてなしのココロを感じていただきたいという思いで名付けた。
 わたしはこれまで商用、私用でたくさんの旅をしたが、印象に残る旅には必ず人との触れ合いがあった。チュニジアのオアシスで迷っているところを助けてもらったり、パリのレストランでは両親の結婚記念日を150年前のお酒で祝ってくれたり、旅の満足度を決めるのは人だ。おいしいもの、美しい町並みも、かかわる人次第でいかようにも印象が変わる。山形の豊かな観光資源を輝かせるためには人が輝かなければならない。山形の観光振興と人、地域という観点で提言させていただく。
 まず人口減と高齢化で地域がしぼんでいく中、業種、組織の壁を取り払って地域全体でお客様をお迎えする覚悟と、観光交流は地域の利益につながるという意識をすべての住人が持つことが必要だ。久々に戻った故郷の南陽市の赤湯温泉は以前に比べてにぎわいを取り戻していた。聞くと旅館が飲食店と協力して、夕食を他の飲食店でも楽しめるプランを導入したとのこと。自分の利益だけを考えるのではなく、地域全体でもてなそうという心が街の雰囲気まで変えてしまうのである。
 2点目は女性、そして若者をもっと観光振興の取り組みに参加してもらうことだ。関係者が集まる研修や会議に参加すると、だいたい私も含めて「オジサン」ばかり。われわれの重要な使命は「あなたの住む場所に行ってみたい」と人の心を動かすこと。観光にかかわる仕事には、おしゃべりで情報通な人が適任で、旺盛な好奇心と行動力が求められる。周りを見るとそうゆうタイプはやっぱり女性、そして若者に多い。
 3点目はプレミアム感を与えられるおもてなしができる人材の育成だ。プレミアムは国の観光戦略でも大切なキーワード。仙台で先ごろ外資系高級ホテルがオープンし、遠刈田温泉では海外富裕層もターゲットにした旅館が営業を始めた。私は先日、ある高級旅館にお世話になった。しかし夕食を担当した若い女性は茶髪で前髪が目を覆うほどの状態。手洗いで用を足そうとすると目の前に「一歩前へ」の張り紙と傍らにはあふれたゴミ箱。料理はおいしかったが、あまり満足感はなかった。
 山形にいらっしゃるお客様が期待するのは、素朴で温かい人々との触れ合いだ。それに加えて上質なサービスを求める層もいることを忘れてはならない。そのような顧客を満足させる高品質なもてなしを維持管理できる経験とセンスのある人材が重要だ。地域のけん引役となり、イメージアップに寄与し、地域全体の利益となるからだ。
 「あさひ旅のココロ館」は江戸時代に建てられた蔵を改装した施設である。天井には樹齢さえ想像できないほどの立派な梁(はり)がある。これを見るたびに古(いにしえ)の人の豊かさを感じる。同時にその頃先人が持っていたアイデンティティーをわれわれは持っているだろうかとも。観光を考えることは地域の将来を考えることである。
 まずは都会の物差しは捨て、山形らしさとは何か考えるときなのではないだろうか。山形らしいライフスタイル、まちづくりを実践することにより、住む人が誇りを持てる地域になれば、外の人からも愛され、にぎわいと潤いが自然と生まれるはずである。

(朝日町在住)

・ある日航社員の転身・亀井秀介さん
・観光交流活動を支援、航空業界から朝日町観光協会議員に転職 亀井秀介さん

9月22日山形新聞